「はじまりの日」
私の絵は
土や石の粉が使われていて
土壁のように表面がザラッとしている
このような表現になったはじまりの日を
今もはっきりと覚えている
それはカオリンという陶土との出会いだ
焼き物をしている先輩から
はじめてカオリンを見せてもらった時
それはコロコロした塊の混ざったクリーム色で
ひなたの陽の中で光っていた
その土を手のひらに受けて
(なんてきれいなんだろう)
と思った
私はとにかく
無性にそれで絵を描きたくなった
そもそも絵画に使えるのか
使えるならどうやって描くのか
全く何もわからないうちから
どうしてもこれで描きたい!
と思ってしまったのだ
その時わき上がった気持ちを言葉にすれば
(見つけた!これ欲しい!)という感じ
その心の叫びで
ぱんぱんに膨らんだ私は
カオリンを抱えてアトリエまで走ったのだった
始めた当初は
画面がひび割れたり
思った色が出なかったり
泣きそうな失敗の繰り返し
今はべそをかくような失敗はないけれど
それでもまだまだ
この美しい土を生かしきれていないと思うし
もっともっと出来るはずだと悩む
でも楽しい
自分を受けとめてくれる素材と対話を繰り返し
あーでもないこーでもないと
アトリエに居る時
どんなに悩んでいても
私は幸せなのだと思う