盛岡 雪の朝

窓を開けたら

わーっと雪が舞っている。

見た瞬間

(わーっ!)と

心が舞い上がる。

(こりゃ大変だ)という思いと

(こうでなくちゃね)という思いの半々である。

 

私は高校生の頃、クラスの文集に

腰蓑の自画像のイラスト付きで

「私はニューギニアに嫁に行く!」

「寒い所からはおさらばさ!」と

書いていた。

 

それほど冬が苦手だった人間なのに

何でこうなった。

 

わからないものですな。

 

雪を見て(わっ!...)と

心が盛り上がった後は、

寒くても窓を開けて

少しの間、空を見上げている。

見ているうちに

心がしんとする。

 

冷たい空気の中

ただ受け止めるしかない

空から降るもの。

 

圧倒的にまわりを

白く覆いつくして

 

だけど春には消えて行く。

 

冬が来る。雪が降る。消える。

その繰り返しが

自分に何を伝え

何を与えているのか

上手く言葉には出来ない。

 

だけど

雪を見上げる度、私は

(この時をずっと待っていたのだ)

と思う。

 

寒いのが苦手なのに。

冬が好きだなんてへんなの。

 

「空から雪が降って来る。」

 

その事がどうして

こんなにうれしく

ほっとするのだろう。

 

たぶん永遠に、その訳を

言葉に出来る日は来ないのだろう。

 

ましてや絵で表現するなんて、

難しいのは百も承知だ。

 

それでも

(この気持ちを残さなくっちゃ)

って思う。

そして絵を描いている。

 

景色と一緒に自分の心も

真っ白にされるひと時。

 

日常生活の中

予告無しにそんな時間がやって来る

盛岡の冬。

 

例え雪かきで腰痛になっても

この土地の冬がくれるものに

私はとても惹かれている。

アトリエの筆にも氷

 

 

雪に朝日がさすとこの絵本が

必ず浮かびます。

「かあちゃん、目に なにか 

ささった。ぬいてちょうだい。

はやく はやく。」

 

はじめのページ。

雪を知らなかった子供のきつねが

朝日に照らされた雪の光に

びっくりしてお母さんぎつねの所に

転げてきます。

大好きな大切な絵本。

 

雪の光を見ると私も

「かあちゃん、

目に なにか ささった」って

心の中で言ってます。

文・新美南吉 絵・わかやま けん

絵本「てぶくろをかいに」より