ナイフとフォーク

いつもの食卓に1人分ずつ

ナイフとフォークが

セッティングされたとたん

「ハレの日」の空気が

漂う気がするなんて、

 

これは昭和生まれの感覚かな?

 

生まれた時からファミレスがあって

気軽にナイフ、フォークで

食べて来た世代とは違うかも。

 

私が子供の頃の日常の食事は

ご飯と味噌汁。

漬物。煮物。おひたし。

旬の魚介類といった

和食があたりまえ。

 

お肉の方がお魚より高かったしね。

 

ザ•和食の食卓では

手に持つのはお箸。

 

たまの外食だって

中華か蕎麦うどん。

お箸で食べる物がほとんど。

 

だからたまに

洋食が食卓に並ぶと、

そのテーブルセッティングに

私はときめいた。

 

きっと当時の大人達も

そうだったと思う。

自分の子供時代にはない文化を

食卓に取り入れる

ちょっとした背伸びと喜び。

 

私の母は

新しい事が大好きな食いしんぽ。

 

料理本を読んだり、

あちこちで教えられたりしながら

洋食のレパートリーを増やした。

 

父も和服姿で

日本酒の盃をかたむけながら

カレー(父はライスカレーと呼んだ)や

ハンバーグ、肉のソテーや

ナポリタンに

細い目を、さらに細めた。

 

昭和の時代は

食べ物に限らず洋風な物は

全てカッコよくて

贅沢で優れているという

空気が流れていた気がする。

 

ヨーロッパやアメリカの

様式やマナーをいち早く

正しく身につけたいと 

皆が憧れてる空気。

 

だからこそ

ハレの日である誕生日やクリスマスは

ちょっとした洋食が並ぶ。

 

メインディッシュは

1人分ずつ盛り付けられ

お皿の右にナイフ、左にフォークが

セッティングされた。

 

「姿勢良くね」

「右手にナイフ、

左手にフォークを持つのよ」

「大きな音を立てずに上品にね」

などとマナーを教わると

非日常感が増して行く。

 

それだけでワクワク嬉しい。

食べる前からもう美味しいのである。

 

大体、お皿の上でナイフを使って

一口ずつ切るなんて。

 

食事なのに切ったり刺したり

楽しい遊びみたいだ。

 

だけど遊びの心は隠して

背筋を伸ばし

お皿の上でカチャンと

音が鳴らないように、

「私、ナイフとフォーク

上手に出来るわよ」と

無言でアピールしながら

ゆっくり楽しんで食べるのだ。

 

頭の中では勝手に

(ここは外国)ごっこが始まる。

ナイフとフォークの魔法か?

 

たぶん、家族みんなの

ときめきテンションが

その魔法を呼んだのかもしれない。

 

魔法の食事の次の日からは

また肩の力を抜いてお茶碗を持ち

お箸でご飯を食べる暮らしが始まる。

 

いつもの尊い和食の日常。

 

それがあるからこそのハレの日。

これは幼稚園の頃の

娘のお弁当箱と箸箱。


和食をスプーンとフォークで

食べるのは、

日本では箸を覚えるまで。


それもほとんど幼稚園で卒業。


だけど私が中学、高校の頃、

お弁当の時に

スプーンとフォークのセットを

持って来るのがはやった。

その頃の意識としては

箸箱よりオシャレという事なのね。

つまり。


もちろん私もやりましたよ。

エヘヘ...\(//∇//)\。

すぐ箸に戻っちゃったけど!


今ではヨーロッパで

「ベントー」が流行ったり

日本土産に塗の箸を大事に買って行く

外国の人がたくさんいるみたい。


お互いの文化を

双方楽しんでいる今の時代が

私はなんだか嬉しい。