トホホ

調子に乗って一歩踏み出すと

必ず ずっこける。


私の人生 そのパターンが

盛りだくさんだ。


そそっかしくて

ひとつに集中すると

他を全部 取り落とす。


それなのに、小学生の頃とか

大人の受けが良くて

ちょっと足が速かったり

絵が描けたり

作文が書けたりすると

まるで有能な子と思われて

本人もまわりも

そう錯覚してしまう。


結果、何が起こるかというと

大惨事が起きるのね。


私なぞ そのいい例だ。

今も忘れられない思い出を

思い切ってお話ししたい。


「出来る子」と自分でも

錯覚していた小学校時代

私は演劇クラブ部長として

もう調子に乗りまくっていた。


クラブはみんな面白がりの

気の合う友達がいっぱい。

後輩達もみんないい子ばかり。


オリジナルで台本を作ったり

演出も凝りに凝って

みんなで実験的な事も楽しみ、

それはもう、我が世の春と

ブイブイ言わせていたのだ。


そんな私が主役の演目は

「不思議の国のアリス」 


4幕からなるダブルキャスト。

一幕目からは私。

もう1人のアリスは後半から。


2人で色違いのワンピースで

臨むほどの凝りよう。


全校生徒の前、幕が上がる。


練りに練った演出と練習の結果を

今ここに!という場面。


私主役、アリス💕

行っきまーす!って感じ。


さて、その頃の演技指導として

「舞台のセリフは

観客の方を向いて言う事」

というのがあった。


その方が声が通って

後ろの客席までセリフが

聞こえやすいからだと思う。


だから私も皆も一生懸命に

舞台から顔を観客に向けて

セリフを叫ぶ練習をして来たのね。


不思議の国のアリスは

はじめの一幕で

ウサギを追いかける。


全校生徒が見守る本番。


「ウサギさーん!待ってー!」

と顔を観客に向けたまま

ウサギへと走った私は

大道具の木と盛大にぶつかって

その木ごと転げたのだ。


だって見えなかったんだもん。

木。


ただの転び方じゃない。

頭から一回転。


アリスのワンピース

めくれてパンツ丸出し。


全校生徒の前で丸出し。


阿鼻叫喚

全校生徒大笑い

幕閉まる 大惨事。


あああ...

今更だけど 

演劇部のみんな、ごめん。


あの時はちゃんと謝る余裕

全然なかった。


あんなに練習してたのに

一幕で台無しに。


ほんとごめん。


その時から 私はじわじわと

「自分はまわりの人が

思ってくれてるほど

有能ではない」

という事に気がつき始めたのだ。

やっと!

トホホ...


不思議の国のアリスより

水戸黄門の

うっかり八兵衛の方が

私にはしっくりくる気がする。


なんの役に立っているのか

わからないけど、何故か

御一行についてまわる八兵衛。


いや、はっきり言って

役立たず。


だけど私は八兵衛が

下を向いている所を

見た事がない。


そうなのだ。

私は一生「出来る人」には

なれそうもないが、

八兵衛の様に

食いしん坊のうっかり者でも

腐らず 自分を卑下せず

笑いを絶やさず

少しでも前へと歩く

そんな人間でいたいと思う。

切実に。


私を見下ろすしま
「ま、そう落ち込まずにさ」
とでも言いたげ

さて今の私は、幸せな事に

その時の小学校の友人達と

何年か前から

また繋がる事が出来た。


どんなに久しぶりでも

滅多に会えなくても

会えば 話せば 昔からの友達。


みんなありがとう。

本当に嬉しい。



#がんばれうっかり八兵衛
#歩いて行くんだしっかりと
#走るならちゃんと前見ような
#あゝ人生に涙あり