「そそっかしいのね」と言われた事は数え切れない。
小学校から始まってバイト先でも
何処でも言われ続けて来た。
せっかちなのに、それに見合うだけの能力がないのだ。
だからよく物を落とす。壊す。
食べこぼす。
つまずいてたたらを踏む。
頭や手足をあちこちにぶつける。
適切な言葉が出て来るまで待てず
ズレた発言をする。
はやる気持ちが無駄に手足を動かすこととなり、大袈裟な動きをするアホーな人間になってしまう。
そんな私が、何とか落ち着いて
ひとつひとつ大切にやれているのは、絵を描く事だと思う。
私は本当はせっかちなのではなく、焦っていただけなのだ。
小心者。臆病者。
だから早く安心したくて
急ぐ、焦る。
本当は誰かに、何かに、
(ゆっくりでいいよ)と言って欲しかったのだ。
私は今、陶土を使って絵を描いているが、
それはある意味とても厄介だ。
濡れている時と乾いた時の色が全然違うし、
乾くのも時間がかかる。
だからじっくりゆっくり
画面とつき合わざるをえない。
だからよかったのだと思う。
画材の特性がそのまま、私の焦りを鎮めてくれる事になる。
「急がなくていいよ」
「この時間軸について来なさい」
そう言ってくれているように思う。
そのおかげで
ゆっくりと自分の内側の声に耳を澄ます時間が広がっていく。
それはまるで
幼稚園や学校に通う前の自分だ。
家の中とその周辺が
世界の全てだった3歳くらいの
その頃の時間の流れだ。
毎日の太陽の光や風や
雨の音の小さな違いにも
びっくりしていた頃の時間の流れがやって来る。
絵を描く時、
画材の特性に自分を合わせて、
寄り添えば寄り添う程、
本来の自分の中にかえっていくような気持ちになる。
かたつむりのようにゆっくりな、
私にとって、宝物の時間である。