幼なじみ

 

 勝手に子供の頃からの友達だと思っているものがある。

 

ままごとに付き合ってくれた草花。

 

飛び立つまで育てたアゲハチョウ。

 

季節を教えてくれた野菜や果物。

 

寝つきの悪い私を見ていた月。

 

ひととき出会い、そばにいて、

去って行った猫達。

 

夏休みの、川の水音。

揺れる稲。飛ぶイナゴ。

 

故郷の海の匂い。

波の音と貝がら。

 

大好きだったのに、

題名も知らず、

歌詞もうろ覚えの子守唄。

 

それからそれから、

いっぱいたくさん。

 

「みんなどこに行ったのかな。

もう会えないのかな。」

 

そう思った時もあった。

 

でも違った。

 

時間が経って、私はずいぶん

遠く離れた場所に来てしまった。

 

ところが友達は、

あの頃と同じ顔して

ひょっこり

会いに来てくれる事がある。

 

ほんとはみんな、

ずっと私の側に居て、

私が気がつくのを

待っていてくれたのかな。

 

「あれ、久しぶり、

こんな所にいたの?」

 

「いたよ」

「ずっといたよ」

 

そんな風に草が揺れる。

雲から月が顔を出す。

同じ目をした猫が

こちらに走って来る。

とっくに会えなくなった人が、

角を曲がる人に重なる。

 

これは都合のいい妄想だろうか。

感傷に浸るあまり見た夢か。

 

しかし、単純に嬉しいのだ。

たまらなくありがたいのだ。

 

それはやはり

幼なじみからの贈り物だと、

大事に私は受けとめる。